花が咲く頃にいた君と
いつの間にか寝てしまったらしい。

窓から吹き込む、冷たい風に目が覚めた。


いつの間にか、太陽と月がバトンタッチしていた。



真っ暗な部屋。



天井窓から射し込む月の光だけが、ここを照らした。



さっきまで埃っぽかった部屋。


冷たい空気で満たされていた。



部屋が埃っぽかったわりには、ベッドはそんなこともなくて、今更ながらお日様の匂いがすることに気付いた。




「さむっ…」


あたしは1つ身震いをして、出窓を閉めた。



ベッドの脇、膝を抱えて小さく座り、夜空を見上げた。



濃紺の空に浮かぶ星は、数えられるほどしかなかった。



独りでいると、とてつもない孤独感に襲われた。



もう、十夜の“帰ったぞ”って朝っぱらから煩い声は、ここにはない。



「じゅ~」



膝に顔を埋めて、小さな声で呟いた。



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