花が咲く頃にいた君と
あたしはどうやら、重度のファザコンだったらしい。


十夜が居ないと、寂しくて悲しくて、気を緩めると涙腺も一緒に緩んでしまいそうだった。


しんと息が詰まるくらい静まり返った部屋で、何処からともなく複数の足音が聞こえてきだした。



バタバタと辺りを走り回る音に、別に気にもならないのに体が勝手に動いた。




屋根裏部屋の入口から、頭だけひょっこり覗かすと、遠くの廊下でメイド服を着た何十人もの人達が、バタバタと慌ただしく走り回っていた。



けれど特に興味もなくて、覗くのを辞めた。


「あぁ~、どうしようか」


そのままゴロンと寝返りを打って、天井を見つめた。


「とりあえず、お腹空いた」



仰向けになったまま撫でたお腹は、今にも背中とくっついてしまいそうな程、へっこんでいた。



流石に、昼飯を抜いたのはまずかった。




それでなくとも、健康不良児なのに…。



あたしはため息をついて、重い身体を起こした。



階段を下りると、そこには既に人影はなく、オレンジの室内灯だけが不気味に廊下を照らしていた。




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