花が咲く頃にいた君と

クラスメイトは若旦那

あたしは目をしばたかせ、立ち上がった東向日を目で追った。


「初川さん、すいませんでした」

「若旦那様、頭なんか下げないで下さい。これは私のミスです」



目の前で繰り広げられる意味の解らない会話。


燕尾服のお爺さんと、よれよれカーディガンを着た高校生の、世にも奇妙なダブルタッグ。



「あ、の」


話に入り辛いものの、もぞもぞ挙手して発言してみる。



「あたしを買った“若旦那様”って…」


もしかしなくても


「僕だよ」


柔らかい笑みだったけど、それはちょっと困った感が含まれていた。


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