花が咲く頃にいた君と
「どうしたの?」


不思議そうな衣夜さんの声に、あたしが無理矢理腕を掴んでいたことを思い出す。


「あっ、すいません。突然…」

「いや、俺は大丈夫。それよりさっきの知り合い」

「クラスメイトです」



さすが大人、周りをよく見てる。


「そう」

「あの子、噂好きなんです。だから…」

「そうか、すまなかった。俺のせいで噂されるかな」



“違います!”と言うとして、勢い任せに上げた顔。


けど言葉は、出なかった。



「何でそんなに楽しそうになんですか?」

「“援交”って、普通歳の食ったやつが、やりそうな感じするからね、俺もだいぶ老け顔に、見られてきたのかなって」


さすが大人の男、あんまり動じてない。


というより寧ろ、喜んでいる。



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