花が咲く頃にいた君と
ジト目で、喜ぶ衣夜さんを見上げた。



「そうでしたね、衣夜さんの悩みは“童顔”でしたもんね」


いつだっか聞いた、衣夜さんの悩み。



あたしの静かな高校生ライフを思うと、厭味の1つも言ってやりたくなった。



「あ~、すまない。軽はずみな発言だった」

「わかってくれたんならいいんです」


衣夜さんは苦笑いを浮かべた。



「あのツンデレっぷりは、昼間も健在なんだね」

「別にツンデレじゃ…」

「もし、噂を立てられても堂々としていなさい。ふゆちゃんにやましいことは何もない。

そうしたら、噂なんて直ぐに無くなる」



衣夜さんの言葉に、無言で頷いた。

それに満足したのか、衣夜さんはあたしの頭を撫でて、駅の方へと去って行った。


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