花が咲く頃にいた君と
目の前の柊は、顔を真っ青にして崩れていく。


「潰されなかっただけ、マシだと思いなさいな」

あたしは、どうでもいい風に呟いて、朝食を拾った。


なんて間抜けなんだろう。


股間を押さえて、悶える男。



イケメンが聞いて呆れる。


フンと鼻を鳴らして、歩き出した。



なのに、

ドサッ!


「いたっ!ちょっと、何してるんですか」


思いっきり軸足を捕まれて、思いっきり前のめりに転んだ。


それは見事なものだった。



上半身を軽く起こして、肩越しに振り返る。


まだ顔を真っ青にしたまま、股間を片手で抑える柊がいた。


「俺だけなんて酷いっしょ?
ふゆちゃんにも、共倒れしてもらおうと思って」

柊のニヤリと歪んだ笑み、腹黒さを垣間見た。



「たち悪っ」



あからさまに舌打ちをして、白い目で睨み付けながら呟いた。



怒りはふつふつと沸き上がるものの、理性の方が上回り、喚くほどには至らない。


かなり冷静な怒りだった。



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