花が咲く頃にいた君と
どうやって東向日の所に戻ったのかわからない。


ただ虚ろな瞳で、足元を見つめていた。


何度か人にぶち当たった気もしたけど



もうどうでも良かった。


静かに玄関を開けたつもりだった。



なのに、思ったより音が響いた。




「冬城さん!!!」


ホールの様な玄関にこだまする声。



思わず顔を上げる。


その人は躓きながら、階段を駆け降りてきた。



勢いあまって、靴が脱げて転がった。



それを視線で追ってたのに

次の瞬間、目の前が真っ暗だった。



荒い息遣い

早い鼓動

激しい熱


あたしは東向日の腕の中にいた。




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