花が咲く頃にいた君と
あたしと父親を切り裂いたのは、本当かどうかはわからないけど東向日。


普通、憎むべき相手なはず。


けど手放したのは、決断したのは十夜。


そしてそれに便乗する様に、下宮比さんも。


“あたし”という人間を形成する上で最も重要な人間が、あたしの前から消えた。


いや、あたしが消された。



もう、選択肢はない。


東向日を選ぶしか、それしか答えはない。



あたしはいつからこんなに、弱い人間になったんだろう。


いつからこんなに他人に依存する様に、なったんだろう。


誰かの温もりを感じていたい。


独りは寂しい。



あたしは、ただのガキだ。




泣き疲れた。


東向日に抱き上げられて、布団に潜る。



微かに意識は、夢と現実の狭間


ふあふあした感覚が心地よい。



温かい温もりに擦り寄った。



『二度はないよ』




手放す意識、聞いた声は夢に落ちた。



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