花が咲く頃にいた君と
昨日あれだけのことがあったのに

悪夢を見ることはなく。

むしろその目覚めはスッキリしたものだった。



きっと、それは一晩中、東向日の腕の中にいたからだと思う。



昨日までのあたしなら悲鳴を上げていたけど


今は上げるどころか、媚を売るように擦り寄った。



無意識に“捨てないで”って意を込めてたのかもしれない。


けど、ずっとこのままではいられない。



あたしは学校へ行かなきゃならない。


昨日、変態共と約束した。


それに、売られた喧嘩も買った。


返品は不可だろう。

まぁ、返す気もないけど。



きっと今日から、全面戦争だ。




温かい腕の中、自ら抜け出そうと身体を捻った。


「ふゆ、しろ…さん」


東向日の寝起きの声、ちょっと掠れていて、普段見ない雄の部分を感じた。


「ご、めん…なさい。起こしたね」

「大丈夫~」


見上げた顔

遮る前髪が無くて、端麗な顔を直視した。


ほわんと歪められた顔、思わず力が抜けた。



東向日はいつだって、甘い。



「学校の準備、しよう?」


多分、顔は赤くなってる。


今のあたし、乙女っぽい。



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