花が咲く頃にいた君と
「昨日、もしかして学校行ってたの?」


東向日は寝転がったまま、起き上がろうとしない。


それどころか、あたしのことも押さえ付けて起き上がれなくしてくる。


見た目、ひょろひょろのクセに、なかなか力がある。



あたしは対抗心で身体を起き上がらせようとしてみたけれど、すぐに諦めたて、東向日と向き合うように寝転び、澄んだ瞳を見つめた。


「そうだけど、後バイトにも行った」


その言葉に彼はみるみる目を見開いて、次の瞬間には起き上がってた。



「バイト!?」


“何それ?僕聞いてないよ!”


向けられた視線が、そう言っていた。




「そうか、まるで考えつかなかった」


今度は深刻そうに考えこんでいる。



「東向日、お風呂貸して」

「あっ、うん。あっちの扉」

「洗濯もしたい、制服替えがないからインナーが…」



遠慮がちに伝えると、東向日はベッドから立ち上がった。



「洗濯、僕がしとくよ」

「えっ!?いや、いい!」


ついでに下着も洗うつもりだったあたしは、顔を真っ赤にして首を横に振った。



「何で?」

「いいの、気にしないで下さいな」


あたしは慌てて脱衣場に飛び込んだ。


脱衣場も実に広い。


ヘタすると、今まで住んでたアパートの一室よりでかい。



その一角、乾燥機までついた最新型の洗濯機が置かれている。


改めて知る。



東向日はお金持ち。



それはもう、ため息が出るほどに。




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