花が咲く頃にいた君と
一応、シャワーだけ拝借する予定だった。


なのに、バスルームに入ると、大理石の湯船には既にお湯が張られていて、部屋を湯気で満たしていた。



誘われるように、湯船に浸かり、ここが他人の家だと言うことも忘れて、Jポップなんかを熱唱した。



風呂から上がったあたしは、全身つるつる、すべすべだった。



置かれているボディーソープや、シャンプー何から何まで一級品。



銭湯なんかに置かれている、安っちい石鹸なんかとは、当たり前だけど比べものにならない。



いつの間にか用意されてた、ふわふわのタオル。


それに顔を埋めて、感触を確かめた。



髪だけ乾かさないまま部屋を出ると、東向日もお風呂に入っていたようで、制服姿だけど髪がぺたんこだ。



「お風呂入ってたの?」

「うん。昨日入らずに寝たからね」

「お風呂占領してごめん」

「大丈夫、お風呂いっぱいあるから」



東向日は首に巻いたタオルで頭をワシャワシャと拭いた。


あたしも同じことをする。


「何か、猫みたい」

「冬城さんがね」



あたしたちは向き合ったまま、吹き出した。



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