花が咲く頃にいた君と
結局、東向日がドライアーを出してきた。



嫌がるあたしの髪を乾かしてくれた。


ドライアーの風になびく髪。


触れる指が、優しいしくて、少しくすぐったい。


けど、ずっとこのままこうしていたいと思った。



「乾いた、乾いた」


ドライアーの風が無くなり、手で髪を撫でる。



いつもボサボサのロングヘアーが、つやつやストレートロングヘアーになっていた。



「東向日のも乾かしたげよう」

「俺の乾いたよ」


ドライアーを受け取ってみたけど、


東向日の髪は本当に乾いてて、ちょっと不貞腐れた。


「冬城さん、朝食に行こうか」



東向日は眼鏡をかけると、いつも通りの根倉になってしまった。



「ん」


東向日の後に続いて歩き、食堂が別館にあることを知った。



全面ガラス張りで、朝の日差しが柔らかく降り注ぐ。



長いテーブルには、所々花が置かれていた。



「お早うございます。みなさん」


東向日は食堂に入るなり、部屋にズラリと立ち並び使用人達に挨拶していた。


だから、あたしもつられて頭を下げた。



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