花が咲く頃にいた君と
昨日と同じ道を、今日は東向日と歩く。



「ほら見て。あの雲、車みたいだね」


指差す先、東向日の世界が広がった。


「子供みたい」


あたしは笑ったけど、そんな東向日の素直さが、羨ましいと思った。


優しくて柔らかい、東向日だから見れる世界。



現実なのか空想なのか、あたしはそれに引きこまれた。



「おっはよ~。ふゆちゃん!」


穏やかな時間は突如終わる。


気付いた時には現実。


目の前には、柊 努



自然と眉間にシワが寄る。

「あんたの顔なんか、朝から見たくないんですけど」


睨み付けて、呟く言葉は凍てつくほど冷たい。



「ふ、冬城さん」



焦ったのは、目の前の柊ではなく、隣の東向日。


「誰この根倉」

「うるさい黙れ、あんたには関係無い」


自分でも驚いた。


東向日を侮辱する様な言葉。


あたしの心は、驚くくらい炎を燃え上がらせた。



他人なんて興味ない。



なのに、あたしは他人のことで東向日のことで、こんなにも激しい怒りが渦巻いてる。



あたし、ちょっとおかしい。



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