花が咲く頃にいた君と
出来上がった髪型は、なんて言うか…


「ぷっ、わかめちゃんカット!」


日高は腹を抱えて笑う。

保泉もクツクツと隠れて笑っている。


明実はと言えば、満足気に、うんうんと頷いた。

あたしは、じと目で手鏡の中の自分と睨みあった。


「冬城!ちょー似合ってる!激かわゆす!!」


頭を撫でてくる日高。

それを不機嫌に振り払った。


「お似合いよ、冬城」

「保泉に言われると、嫌味に聞こえる」

「えぇだって嫌味ですもん」


握った拳に力が入るものの、何とか“殴りたい”って衝動は抑えた。




わいわい騒がしい周り、あたしは髪を気にしてた。


「えっ、冬城さん?!」


扉が開いて、入ってきた東向日は驚きの声を上げた。


「はい、冬城ですが」


東向日はあたしの目の前まで来ると、固まった。


「冬城さん?」

「そうですね」

「冬城結女さん?」

「そうですね」

「髪長かったよね?」

「そうですね」

「えっ、かつら?」

「そうかもね」

「すごく似合ってるよ」


柔らかい言葉、上がった口角。


無色透明な心は、あたしを変える。


「冬城、顔が赤いよ!」


目敏く気付くのは、“恋多き女”日高だった。



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