花が咲く頃にいた君と
気付いたら、その輪の中に飛び込んでた。


その女の髪を引っ張って、他の女を蹴って、殴られて、あたしの気持ちがどんどん冷めていく。



“そんな目しちゃダメだよ、結女ちゃん!”


“もっと、笑って”



目の前の現実を疎かに、トリップしてた。

いつかの日、麦わら帽子の可愛い女の子。


脳内のスクリーンが焼き焦げて、うまく再生出来ない。



目の前の女どもは次々と、その場に倒れていく。




なんだか変な感覚。


脳内の映像と、目の前の現実。


現実はあまりに遠くて、まるで他人事の様だった。



「結女!!!!!!」


押さえ込まれて、ようやく現実が近くなった。


ハァハァと息を荒げながら、その人は背後からあたしを取り押さえていた。


「僕がわかる?」

「ひがし、むこー」


肩越しに見た東向日は、髪が乱れ眼鏡をかけておらず、その端麗な顔が晒されていた。


けど誰かに殴られたらしく、口から血が出て頬が赤くなっていた。



< 99 / 270 >

この作品をシェア

pagetop