風邪
しばらくすると、部屋中に漂う美味しそうな匂いに雅紀が目を覚ました。

「まり、か」

雅紀の掠れた声が聞こえて、毬花が顔を覗かせた。

「雅紀起きた?」

よく冷えたポカリの入ったコップを手渡しながら雅紀に問いかける。

「ちゃんとご飯食べた?」

「食欲ない」

「お薬は?飲んだ?」

「飲んでない」

やっぱり、と言う表情の毬花に雅紀は肩を竦める。

「お粥作ったから頑張って食べて。食べたらちゃんとお薬飲んでね」

そう言うと、毬花はお盆に乗ったお粥とれんげを雅紀に渡した。

「えー、毬花が食べさせてくれるんじゃないのー?」

いつもより一層気だるさを含んだ声に毬花は苦笑した。

「はいはい分かりました。食べさせてあげます」

「ちゃんとフーフーしてね」

「はいはい」

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