風邪
俺まだ熱ある?、と毬花に額を出してみせる。

当たり前のように彼女は雅紀の熱を確かめるべく、綺麗な手を伸ばした。

雅紀はその手を掴むと、毬花をベッドに引きずり込んだ。

「ちょっと!なにしてるの!」

毬花が非難の声を上げる。

がしかし、雅紀は気にせず毬花を組み敷いた。

「こらっ!病人は―――、」

寝ていなさい!の言葉は毬花の口から発せられることは無かった。

雅紀が熱い唇を毬花のそれに重ねたからだった。

「風邪がうつるじゃんっ!」

「いいよ、俺が看病するから。汗かいたら熱下がりそうじゃん?」

少年のような悪戯心の浮かんだ瞳に至近距離から見つめられ、毬花は頬を赤らめた。


伏せた睫毛、赤い頬、

きめ細かく白い肌、甘い香り


―――最近の毬花は前にも増して色気が出てきたな。女子校で良かったよ。共学だったら俺、心配で何も手につかねえや。


十七歳の彼女が時折見せる女の顔を前に、風邪で熱のある雅紀の理性が保つはずが無かった。

翌日、彼女が看病した甲斐あって雅紀は見事に復活した。





がしかし数日後、彼女が熱を出したのは言うまでもない。
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