≡イコール 〜霊能力者へ 『霊視1』より~
「あっ すいません・・・」

と 言いながら オレは そのイスに

座ることが出来ないでいた

ハルも 黙っている


『やっぱ 怒ってるのか・・・』


ハルの母親が 狭い部屋の中で 行き場を

なくしたように ウロウロしていた


「奥村くん 今 帰り?」

「あっ はい・・・ 救急病院から

転院したんですか?」


「う~ん そうなの!

北山市はちょっと遠いでしょう?

私も 仕事があるから 短期間といっても

病院には 近い方がよくてねぇ」


「そうだったんですね・・・」


母親が オレとの 間 をつないでくれている間も

ハルは オレの方を見ようとしない


「奥村くん!昨日は・・・ごめんねぇ」


謝ったのは ハルの母親だった


「えっ?」


『ごめんね』って 何が?


「昨日・・・春菜が 山で迷ったのを

探してくれたんだって? それで

巻き添えで 山中を滑り落ちたんですってね」


そういうことになってるのか・・・

オレは ハルをチラッと見たが 相変わらず

ハルは 目を伏し目がちにしている


「いえ・・・」


余計な事は 言うまいと オレはそれだけ言って

再び黙った


なんとなく・・・ 場の空気を読んだのか

ハルの母親が


「そうだ!春菜!お母さん今のうちに

今日の分の仕事 さっと片づけてくるから

・・・奥村くん 私 ちょっと外すけど

いいかしら?」


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