≡イコール 〜霊能力者へ 『霊視1』より~
結局オレは その日の昼飯を食べたい分だけパンを買い

ほんの百何十円かになってしまったお金を
学生服のズボンのポケットに入れ 家に帰った


『全部使っていいわよ』


心の中でうっすら

日村令子の言葉を期待した


もしかして 誰かが尋ねてきてオレに小遣いくれるとか…

そんなんだったりして…


オレは学生服のままベッドに横になりながら にやけていた



「なんか 今日は疲れたな」


あの女と話したせいだろうか

ヘンに緊張したせいかな


オレは いつの間にか 夢 を見ていた


何もない…


水も 木も 青い空もない…

ただ・・・

乾いた土の上に誰か立っている


あ… また…

あの女だ…


日村令子


長い黒髪が 顔を隠しながら風になびいている

亡霊かっ…てんだ

この女に取り憑かれたら 死んでも逃げられないような…

そんな気持ちにさせる雰囲気の持ち主だ


相変わらずこちらを見据えたまま動こうとしない


オレは何かを話しかけた

それがなんだったのかは忘れてしまったが

日村令子がこう返してきた

「まだ 間に合うわ

でもね

一度『やる』と決めたら後から引き返そうとしても

…出来ないわよ

そして どう逃げようとしても 決して逃げられない

あなたが…

自分らしく生きるため

そして生まれた『意味』を全うするには

『やる』という道しか残されていないの」


…なぜ こんな話しになったのか覚えていない


ただ その時のオレが感じたのは どうあがいても


『逃げられない』


という感覚だけだった


「じゃぁ どうすれば…」

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