≡イコール 〜霊能力者へ 『霊視1』より~
オレはなんだか 自分が『尋問』している

刑事のように思えてきた


「へぇ~ ピアノいいよねぇ

オレ ジョージ・ウィンストンの

コンサートに行ったことあるよ」


「そうなんですか 私も・・・好きですよ

・・・コンサートは無いけど・・」


あまり 乗り気じゃない?

得意分野を 話題にしたつもりだったんだけど・・


「私 ピアニストになるのが 夢だったんです」


樹花は ウーロン茶をもう一度 コクッと飲んで

テーブルの上に置いた

置かれたウーロン茶のグラスを見つめたまま


「でも・・・ 諦めました

…というより やっと 最近諦められるようになったんです」


と 話した

その眼差しは かつて オレがハルの病室で見た

あのキャンドルを見つめる ハルの眼差しを

思い出させた


「なんで 諦めたの?やっぱり競争とか激しいんだ

うまい人沢山いそうだもんね」


音楽の世界のことなんて ホントはあまり知らない

どんな言葉が 一番ピッタリかなんて分からなかった


「ふふ・・・ 私 全国大会のコンクールで

優勝したんですよ! そしてぇ そのまま

ヨーロッパの音楽院に 入学する予定だったんです」


へぇ~ そんなに スゴかったんだ

オレは なんだか これ以上は 聞かない方がいいような

そんな 気がした でも 樹花は続けて喋った


「私 病気をしてしまって…」


樹花は 左手で頭をチョンチョンと突いてみせた


『んっ?』


「私 コンクールで優勝した ほんの数日後に

痙攣を起こして 倒れちゃったんです」
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