≡イコール 〜霊能力者へ 『霊視1』より~
「なんでだ・・・なんでだ 坂本!

とにかくなんでもいい 無事でいてくれ!」


オレは 猛スピードでチャリを飛ばした


オレの家から 2㎞ほどあるだろう徳村病院まで

10分もかかっただろうか・・・

途中の信号も 覚えていない


昨日と同じく オレは駐輪場の一番手前に

チャリを置き 病院の自動ドアを すり抜けた


入ってすぐ右 受付正面には 外来の待合室があった

そこに リンコは座っていた


目を真っ赤に腫らし タオル地のハンカチで

鼻と口を 両手で押さえていた


病院に入ってきた オレに気づき リンコは

顔をぐちゃぐちゃにして 泣きはじめた


「えっ・・・えっ・・・」


リンコの座っている 待合いイスの隣には


恐らく・・・


本来なら すでにハルの手元にあったであろう

小さな花束が 潰れて 置かれてあった

このどさくさで 誰かが誤って踏んでしまったのだろう・・・


「剛は・・・?」


リンコは 座っている場所から

かろうじて見える手術室に

目をやった


手術室の真ん前にも 長イスは置いてあったが

やつれたカンジの女性が 1人ポツンと座っている

オレは 目を凝らして見た

そのやつれた女性は 坂本の母親だった


旧姓  宮田 奈津子


28年前に起きた 登山の事故で

高野先生を死なせ 瓜生くんを植物人間にし

そのせいで 中道さんと島田さんを

今でも苦しめている・・・


・・・それどころか、自分の罪を隠蔽するために

あの場所を『呪われてる』なんて・・・


よく 息子に『ウソ』をついてまで

平気で 生きていられるものだ!
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