≡イコール 〜霊能力者へ 『霊視1』より~
「高野・・・せんせぇ? 

なかみちぃ?・・・しまだぁ?」


と忌み嫌う相手の名前を

わざと言葉に出し フッと

笑ったかと思うと すぐ真顔になった


「あの人たちが 全部悪いんじゃない!!

山の事なんか 全く分からない私を

一人で 下ろさせたのよ!!

私なんか『死ねばいい』と思っていたのよ!

あの人たちは!!

だから 自分が死んだのよ!」


『救いようがない』とは 

この事だと思った


「自分だけ 助かったって

あなただって 未だにこうして

苦しんでいるじゃないですか…」


オレの言葉を聞くと 宮田 奈津子は

見開いた目を ようやく伏せ気味にした


「自分だけ・・・助かろうとした・・・

ほんとは そんなこと・・・

思っていなかったわ・・・


・・・でも 仕方なかったのよ・・・


山を下りる途中で・・・

滑って捻挫してしまったの・・・・

足の炎症と 元々体調が悪かったのに

登山に参加して 雨に濡れて・・・


私は・・・熱を出していたわ・・・

苦しくて 苦しくて・・・


とても・・・

暗くて・・・


自分の 荒い息と

雨の音しか 聞こえない中で

車のライトが 見えた時・・・

『助かった・・・』って思った


私は なんとか車まで たどり着いたの

そこで 私は伝えようとしたわ

『山の中に 重体の人がいる』って
< 164 / 307 >

この作品をシェア

pagetop