≡イコール 〜霊能力者へ 『霊視1』より~
「えっ?なんか 私おかしい事言った?」


リンコは あっけらかんと 言い放ったが

「なんか・・・意外・・・」

と 間を置いて言った

「なにが?」

その言葉に オレの方が 『意外』だった

「奥村くん・・・人が『ケガ』してるのに 『笑う』なんて…

昨日は 結構『正義感』たっぷりの人みたいに見えたけど…

人って・・・分からないね・・・」


オレは この瞬間 もう『誰にも理解されなくていい』と思った

どうせ 誰も 『本当の事』なんて 『気づいてはくれないんだ!』


その時 日村 令子が あの山で言った言葉を思い出した


『誰にも理解されない苦しみ・・・ 奥村くんになら・・分かると思うけど』


日村 令子・・・ そうだ!


あの『インチキ霊能者!』


あの時やった 『浄霊』ってなんだったんだ!

あの後 坂本は 事故に遭った

あの女のやってる事の方が ただの『パフォーマンス』じゃないか

あんな仰々しいことやっといて なにが『浄霊』だ なにが『供養』だ

全然効き目ないじゃないか!


オレは 日村 令子に対して

ふつふつと 『怒り』の 感情が込み上げてきた

『信じかけていたもの』に 裏切られたかのような 黒い感情が 渦を巻いた


この時の オレは 自分のふがいなさにより 起きた現象を

誰かのせいに したかっただけ だったのかもしれない


『本当の事』なんて こんな風に すぐに感情に『ブレ』が起きる様なヤツには

『見せてもらえないのだ』

そのことに気づくのに オレはその後

どれだけの年数を費やしただろう・・・


バンッ!

オレは 一気に立ち上がった


「? 奥村くん…?」

戸惑うリンコを 教室に残し オレは 日村 令子を捜しに

職員室へ 向かった

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