≡イコール 〜霊能力者へ 『霊視1』より~
『知らない』のは オレだけだった

『知って』しまった 今 オレは こんなに もがき苦しんでいる


『知るが煩悩 知らぬが仏』


オレ一人が バカだった

ただ 

今のオレの『救い』は 日村先生と 知り合いであったという『希望』だけだ


『死んだ後の世界・・・』


いずれ・・・ 誰もが この肉体を 土に返さなければならない

肉体を脱ぎ捨てた『魂』が向かう先・・・


樹花にとって 『死』 とは 遠い存在ではなかった

樹花にとって 『明日』とは 当たり前にくるものではないのだ


もちろん 樹花だけではない 

樹花は ただ病気になったから それを『教えられた』だけで

誰もが 何かに目隠しをされて明日を生きようとしている

しかし

その日が近いことを 樹花と樹花の両親は 1ヶ月も前から知っていた


オレ以外・・・


樹花の命が『風前のともしび』だということを 皆が知っていた


樹花は 病気について 泣くことも わめくことも 精神的に乱れることもなかった

時々 寂しげな 表情をする時はあるが オレを困らせるようなことなどなかった

オレは そんな樹花を尊敬し 更に いとおしく想った


「私ね・・・昨日 すごく頭痛くなっちゃって 意識なくして倒れちゃったけど

一つだけ イイ事がある!」


「なに?」


樹花は 満面の笑みだ


「こうして・・・ピカちゃんが 私の隣に居てくれてる

私が 最近ずーーーーーっと 願ってたことだったから・・・

病気に 感謝してる!」


オレは 何も言えないでいた


オレは 半年前 全てがイヤになり 会社を辞めた
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