≡イコール 〜霊能力者へ 『霊視1』より~
待ち合わせのカフェで 外のテラスに座っていた樹花は

白いパラソルの下で オレを待ちながら 何やらメールを打っているようだった


オレは 樹花の後方から 樹花に近づいていった

今日樹花が 待ち合わせに選んだ服は 樹花のお気に入りの

ピンクのワンピースだ

袖口のレース使いがとても気に入っていると 以前話してくれたのを思い出した


樹花を見つけてから オレは歩くスピードを緩めていた

「まず 第一声はなんと声をかけたらいいんだろう…」

まさか 笑顔で「久しぶり!」はないだろう

約3ヶ月の空間が オレをぎこちなくさせた

色々考えながら 樹花のすぐ後ろまで来た

樹花は メールに必死になっているせいかオレの気配に気付いていない

『それとも気付かないフリをしているのか・・・』


ゴオオオオオォォォォォ・・・・・


飛行機が上空を飛ぶ音が聞こえ 樹花は 白い帽子のツバのふちから 空を見上げた

オレもつられて 空を見た

真っ青な空に 飛行機は かなり小さく上空に見えた


『へぇ 飛行機の音ってこんなに近くに聞こえるモノなんだ・・・』


ガタンッ


何かが落ちた物音に オレはパッと顔を正面に戻した

目の前で樹花が 携帯を落としたようだ

オレは 樹花の元まで走り 樹花の足下に落ちた携帯を拾い上げた

かがんだまま オレは 落ちた携帯を渡そうと 帽子の中の樹花の顔を覗き込んだ


「ほら・・・・」


その時 オレの呼吸は一瞬止まった


樹花は ハンカチで口元を押さえていたが

顔面は真っ白で テラスのテーブルの上にある視線は

一点を見てはいるが 焦点は合っていない

ハンカチで押さえている口元からは

たった今もどしたモノがピンクのワンピースに流れ落ちている


「・・・樹花?」


もうすでに オレの言葉は樹花には聞こえていなかった

必死に見開いていた目は 突然閉じられ

身体は 痙攣を起こしだした

樹花は オレの方に倒れてきた


ドサッ

オレは 倒れてくる樹花を精一杯受け止めた
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