≡イコール 〜霊能力者へ 『霊視1』より~
『販促課の松本です

今度 うちの課で立ち上げるプロジェクトは うまくいきますか?』

『総務部の田中です

初めて相談します 僕の家は神道なんですが今度仏壇を置くことになりそうです

神棚と仏壇を一緒に置いても 問題ないでしょうか』


『営業部 山田

 最近娘が ヘンな男と付き合っている いい奴かどうか分かるか?』


オレは 毎日毎日 加速しだした『霊能力者』という

周囲からの ヘンな『期待』の重圧に 耐えられなくなってきていた


オレは『やりがいのある』仕事をし それで『認められる』人間になりたかったのに

今はどうだ オレ自身ではなく オレの『能力』だけが 一人歩きをしはじめた

しかも

もう深くは関わらないと決めた『あの世界』から

自分では 全く望んでいない『霊能力者』という『生き方』を

ここに居ては もっと深くもっとちゃんとした事と オレは向かい合っていかなければならなくなる


オレは 逃げ出したかった

でも 仕事は辞めたくなかった

でも周囲はもうオレを『普通』の目で見てはくれない


その間 有名な『霊能力者』と言われる人や 『占い師』などにも見てもらったが

オレの納得のいく『セリフ』を言ってくれる人はいなかった

また その度に 日村 令子に啖呵を切ったことを 思い出した

苦しかった・・・


結局オレは 日々の『仕事意外』での重圧から抜けきれず

会社を辞めた

その頃から 昔『あなたに彼女は守れない』と言われた言葉に

また取り憑かれるようになった

夜 ベッドで隣にいる樹花の寝顔を見ながら

樹花からもまた ハルの時のように『守護霊』がオレを威嚇しに出てくるのではないか

そういう 切迫感も手伝って

オレは 樹花と過ごせなくなっていた

樹花といる時間を とても不自然に振る舞う事にも疲れた

そうしないと 樹花は心配する

でも オレは 少し休みたかった

とにかく 1人になりたかった

誰も 樹花でさえも 視界に入れたくなかった


誰もオレに 構わないでくれ!


オレは 段々と樹花と暮らす部屋に帰らなくなっていた
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