≡イコール 〜霊能力者へ 『霊視1』より~
「へえ… がんばってるんだ…」


オレは 自分がますます情けなくなってきた

坂本がこんなに 頑張っている最中に オレはヤケを起こして会社まで辞めていた


そして更には『愛する人』さえ失いかけている・・・


「本当に・・・迷惑かけたと思う 俺のバカな行動で お前もリンコも無駄に傷つけてしまった」


坂本は 7年前のあの日『無免許』でスクーターをとばした事を言っている


「ホントだよ・・・ アレはお前らしくないよな」


オレは 偉そうに言った


「あぁ…」


車内の全員が黙った


その沈黙を破ったのは 坂本のお母さんだった


「奥村さん・・・」


「はい」


オレは 振り返った


「剛があんな事をしたのは… 私のためだったんです…」


「えっ…」


「あの日 花屋の外を見た時 信号待ちをしている車の中に

剛は私の夫… つまり剛の父親を見たんです

勿論未だにその人が本当に剛の父親だったがどうかは 分かりません

でも… 家に帰らない父親と とにかく話しがしたい…

剛はずっとそんな思いでいたので 見つけた時 思わずあんな行動に出てしまったんです

誰かの車の助手席に乗っていた 夫を追いかけるには それしかないと思ったみたいです」


また 皆が黙った

オレは この沈黙に 日村先生の言葉を思い出した


『チカラの強い『霊』になれば 『人』をゲームの駒のように扱う事だって出来る・・・』


この『見えないチカラ』によって動かされる事に対し

オレを含め ここに居る全員が『見えないチカラ』と向き合い

『触れていくこと』『受け入れる事』を決心したのだと思った


オレがずっと『邪魔者扱い』してきた能力が もしかしたら本当に

『人』だけでなく『霊』に対しても 作用する事が出来るのであれば

そうしたら オレは・・・オレは自分がやっと『ホンモノ』の自分になれる気がした
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