≡イコール 〜霊能力者へ 『霊視1』より~
オレとハルが 昨日滑り落ちた場所は

そこから 5~6分小走りで下った所だった


こうして 明るくなって見回すと そう険しい場所でもなかった

上方でオレたちが滑った 山の斜面は さすがに崩れてはいたが

他は何事もなかったように 穏やかだった

見上げると 昨日の楠木がはっきり見えた

そこから オレたちが滑り落ちて来たルートを 目で追ってみた


オレは その中腹で目を留めた

滑り落ちた途中にある木の枝が 半分折れていた


『おそらくこの枝が ハルの足に怪我を負わせた原因だろう』


結構太い枝だった


『オレとハルの居た場所が逆なら

 ハルはケガしなくて済んだんだろうな…』


オレは そんな事を考えていたが

やがて 今はすでに立ち止まっている

日村 令子との距離は 半径3M といったところだった


そして 日村 令子が立っているその場所は

まさに 昨日 オレとハルが 最後に居た場所だった


勿論 オレがこぼした麦茶のあとは なかったが

オレとハル そして 日村 令子と小津の 足跡は

ぬかるんでいた土にしっかり残って 今はやや乾いていた


「ここね」

日村 令子は 誰に『確認』しているのかは

分からなかったが そう言うと

手に持っていた 紙切れと小さな木の板を地面に置いた

そして おもむろに 上着のポケットから

透明なガラスを綺麗な多角形に カットしてある

数珠を取り出した

地面の上に置いた紙切れは 書道などで使う『半紙』だった

半紙は 2枚 上下に並べて置かれ

上は 縦書きで 『供養』という文字が

下は 横広にした半紙に やはり縦書きで

なにやら難しそうな『漢字の羅列』が書かれてあった

何かの『お経』のような気がした



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