≡イコール 〜霊能力者へ 『霊視1』より~
「昨日は・・・大変だったね・・・」


オレが 2つのうどんを 取ろうとしたその時

中道さんは呟くように言った

島田さんは 視線を オレの手元のうどんに

置いていた


「・・・いえ」


オレは 何と答えて良いか分からなかった

はっきり 「はい 大変でした」なんて

答えるヤツはいないと思うけど…

どの程度の 空気 を保てばいいのか

よく 分からなかった


「昨夜・・どんな感じだったか直接尋ねてもいいかな・・・」


島田さんは 今度は目線を オレの胸のあたりに移し

その後 やっと オレの返事を確認するかのように

オレの目を見た


「どんな感じ・・と いうと・・・」


昨日の 霊の姿を

リアルに この人たちに 話していいものなのか

それとも 

高野先生が水を欲しがっていた事のみ

伝えるべきかを まず 迷った


しかし 後になって思えば オレのこんな

ちっぽけな気遣いなど この人たちには

必要なかった事を 知ることになるのだが・・・


「オレが 見た・・・カンジでは 

『水、水』って言ってたんで たぶん・・・

かなり のどが乾いていたんだと思います」


島田さんは Gパンの後ろポケットに

突っ込むように入れていた

随分よれよれになったタオルを取り出して

目頭を押さえた


「まだ、そんな事を・・・」


島田さんは 昔の思いが ぶり返しているようだった


「あっ なので オレ・・水は・・まぁ 麦茶でしたけど

ちゃんとあげたんです!持っていた分、全部!!」
< 97 / 307 >

この作品をシェア

pagetop