天狗の嫁入り
相模は自分は妻になるのだと言い切った。
だが、彗は自分に強要はしなかった。
慣れない世界、初めて知った自分の事、不安で押し潰されそうになってた心が桜は少し軽くなった気がした。

「彗さ、彗、」
「ん?」
「あの、窓から見える梅は敷地内?」
「あぁ。」
「明日、外に出てお屋敷を探検してもいい?」
「そうだな…俺が案内してやる。」
「え?」
「迷われて戻ってこなかった困る。」
「なっ…」
ムッとして赤くなった桜を見て彗は微笑んだ。

タイミングよく失礼しますと御膳を従えた相模が襖を開けた。

相模の後ろには美女が御膳を持ち控えていた。

素早く桜の前と彗の前に御膳が置かれ、酒の籠を持った美女が当たり前の様に彗の傍らに座った。
「彗様、今日は少し早いですが桜で作ったお酒をお持ちしましたの。」
「分かったから、籠を置いて下れ。」
「え…」
「桜に酌をしてもらう。」
美女は桜を一睨みして部屋を出て行き、相模も一礼し部屋を出て行った。
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