天狗の嫁入り
「入っていいか?」
遠慮がちに掛けられた声にハっと我に返った桜はどうぞとだけ襖の向こうの声に返した。
艶やかな黒髪をゆるく後ろで束ね、赤い目を持つ昼間の青年が桜のいる寝台に腰掛けた。
「まだ、名乗っていなかったのを思い出してな。」
「彗さんでしょ?さっきシンくんが言ってた。」
「あぁ。知ってるとは思うが、俺は天狗だ。」
「天狗・・・。」
「桜の名は知っていた。お前は有名だからな。」
「有名?」
「あぁ、お前は今は滅びた水神の娘だ。」
「水神って、もしかしてパパとママのこと?」
「そうだな、正確にはお前の母親だがな。」
「1000年に1人しか生まれない水神の娘を取るものは種族に繁栄と力をもたらすらしいからな。」
「ちょ、ちょっと、何で水神じゃないといけないわけ!?で、1000年に1人って何!?」
「まず、水神は水を司る妖怪でもあるがその位は神に近いものがある。その文字通り水を主体とした力を持つ水神はどんな種族とも形を変えず交わることが出来る。そして、1000年に1人と言うのは水神の力を受け継ぐ者の存在する数だ。お前の母親は身籠った命が狙われているのを知り、この世界から逃げたんだ。赤ん坊は食われて終わりだからな。」
「く、食われ・・・っ。」
「今だって油断は出来ない。勝手にこの屋敷から出るな。」
「彗ーーーっ!!!あんたっ、何で知らせてくれないよっ!!!」
「何で、ここにっ・・・」
「いやね、心待ちにしていた妹よ。飛んできたのよ。」
腕を組み彗を見下すのは艶やかな黒髪をたっぷりと下げ黒地の着物に赤い花を散らした赤い目を持つそれはそれは妖艶な美女だった。
「紹介が遅れてごめんなさいねっ、この天狗の当主である彗の姉の燐(りん)よ。よろしくね、桜ちゃん。」
「はぁ。」
「やっだ、彗ったら桜ちゃんまだ着替えてないじゃないの。着物は?あんた、結構な量を用意してたでしょう?」
「なっ・・・」
「姉さんは何でも知ってるのよ?分かったら出て行きなさい。」
どこの世界も姉弟の力関係は同じなんだろう。
ギロっと睨まれた彗は黙って部屋を出て行くしかなく、まさか自分が着物を用意していたことを知られてるとは思ってもみなく居たたまれなさで一杯だった。
遠慮がちに掛けられた声にハっと我に返った桜はどうぞとだけ襖の向こうの声に返した。
艶やかな黒髪をゆるく後ろで束ね、赤い目を持つ昼間の青年が桜のいる寝台に腰掛けた。
「まだ、名乗っていなかったのを思い出してな。」
「彗さんでしょ?さっきシンくんが言ってた。」
「あぁ。知ってるとは思うが、俺は天狗だ。」
「天狗・・・。」
「桜の名は知っていた。お前は有名だからな。」
「有名?」
「あぁ、お前は今は滅びた水神の娘だ。」
「水神って、もしかしてパパとママのこと?」
「そうだな、正確にはお前の母親だがな。」
「1000年に1人しか生まれない水神の娘を取るものは種族に繁栄と力をもたらすらしいからな。」
「ちょ、ちょっと、何で水神じゃないといけないわけ!?で、1000年に1人って何!?」
「まず、水神は水を司る妖怪でもあるがその位は神に近いものがある。その文字通り水を主体とした力を持つ水神はどんな種族とも形を変えず交わることが出来る。そして、1000年に1人と言うのは水神の力を受け継ぐ者の存在する数だ。お前の母親は身籠った命が狙われているのを知り、この世界から逃げたんだ。赤ん坊は食われて終わりだからな。」
「く、食われ・・・っ。」
「今だって油断は出来ない。勝手にこの屋敷から出るな。」
「彗ーーーっ!!!あんたっ、何で知らせてくれないよっ!!!」
「何で、ここにっ・・・」
「いやね、心待ちにしていた妹よ。飛んできたのよ。」
腕を組み彗を見下すのは艶やかな黒髪をたっぷりと下げ黒地の着物に赤い花を散らした赤い目を持つそれはそれは妖艶な美女だった。
「紹介が遅れてごめんなさいねっ、この天狗の当主である彗の姉の燐(りん)よ。よろしくね、桜ちゃん。」
「はぁ。」
「やっだ、彗ったら桜ちゃんまだ着替えてないじゃないの。着物は?あんた、結構な量を用意してたでしょう?」
「なっ・・・」
「姉さんは何でも知ってるのよ?分かったら出て行きなさい。」
どこの世界も姉弟の力関係は同じなんだろう。
ギロっと睨まれた彗は黙って部屋を出て行くしかなく、まさか自分が着物を用意していたことを知られてるとは思ってもみなく居たたまれなさで一杯だった。