天狗の嫁入り

俺に、敬語なんて使わなくていい。気を張り詰めすぎると、そのうち倒れるぞ。」
「それじゃあ、彗さんの地位が…」
「この地位は…なんでもない。それと、彗でいい。」
机に肘をつき、言い聞かせるような目と絵になる姿に桜は目を奪われた。
会った妖は誰もが美人ばかり、まるで芸能人に囲まれているかのような錯覚におちいりそうだった。

「呼べるわけないでしょ。貴方は天狗の中で一番偉い人なんだから。」
「関係ない。俺は俺だ。」
「桜。俺はお前をこう呼ぶ。平等だろ?」
「うっ…。わかった、努力はする。」
「さて、メシにすっか。」
そう腰を上げた彗の邪魔になってはならないと立とうとした桜だがそれは叶わなかった。

「どこ行くんだ?」
「どこって、ご飯食べるなら邪魔になるから部屋に戻ろうかと…」
「お前も食うんだ。こっちに来て何も口にしてないだろ。」
「や、いいですっ、遠慮しますっ！！」
「飢え死にする気か?」
「だって、私、トカゲとかカエルとか血とか食べれないもんっ！！」
「は?」
「ぷっ。あはははっ。姫君、ご安心ください。普通の食事です。多少、珍しい物はあるかと思いますがトカゲやら血やらはありませんから。」
食事を頼もうと彗が呼んだ相模に話を聞かれて大笑いされた桜の顔が段々と朱に染まる。

それを見て面白くなさそうな顔をした彗を相模が笑ったのは言うまでもない。