好きな人は芸能人*ラブソングは始まりの合図*
宣伝部に戻り通常業務をこなしていると、書類を抱えた安奈が戻ってきた。
「岡野さん、片付けお願いできる?」
「はい。行ってきますね。」

誰もいない会議室に入ると緊張の糸が切れたせいか派手にお腹がなってしまった。
今日は早く帰って、早くご飯にありつきたかったのに、机には書類の山…
空腹を抱えて仕事をしなくてはならないこと決定だった。
はぁ…っと一つため息をつき久美はペットボトルやコーヒーの缶をゴミ袋に放り込んだ。

一番前の席、机にちょこんと置かれたゴシック調の指輪。
会議中、気が散ってか邪魔になってかSakuが指から外して置き忘れたのだろう。

「これ…。きっと困ってるよね。安奈から圭さんに渡してもらえばいいか。」
久美は指輪をハンカチでそっと包み、スーツのポケットにしまった。
机を布巾で拭き、椅子をキチンと並べ、手にはゴミ袋を持ち会議室を閉め今度こそ通常業務に戻った。

宣伝部に戻ると安奈の姿もカバンも消えていた。
「佐伯主任なら、出かけて直帰するとのことだよ。今日は岡野さんも早く帰りなね。」
「ありがとうございます。」
「机の書類は気にしないで定時にあがって構わないよ。今日はポスター貼りや会議室の片付けやら肉体労働で疲れたろう?」
「いえ、これも仕事ですから。」
「それじゃぁ、私はこれから外回りに行くけれど、無理せず上がるんだよ。」
「はい。」

とは言われたものの…
書類を片付けてからでないと帰る気にならず、結局、残業して綺麗に片付けてしまった。
< 13 / 17 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop