抵抗
それからは、針の筵に座らせられた感じの日々であった。伯父の命で、和己の現金はすべてを預金することになった。その通帳と印鑑は、伯父の厳重な警戒のある金庫に入れられてしまった。お金のことは、伯父の許可が必要になった。こうなれば、大阪までの切符でさえも和己の自由にはならなかった。
雅美は兄が一緒にいてくれるだけで嬉しかった。和己がいなくなれば、離れの寂しい部屋で一人ぼっちである。今まで兄弟で支えあって暮らしてきた雅美には、兄のいない生活は考えられなかった。
「お前が余計なことを喋ったからや。」と和己は横で寝ている雅美をせめた。雅美はせめられても平気だった。<謝ったらしまいや。>と軽く考えていた。「そやけど、あのときは驚いたぞ。」と和己は寝ようとする弟を揺り起こした。
雅美は布団の上に座ると、「もう、しつこいねんから。」と和己をせめた。そして立ち上がると、便所へ向かった。「お前が悪いんじゃ、ボケめが。」と和己は弟の背中に向かって声をかけた。その言葉を背中に受けたとき、雅美の体が硬直した。そして背中がビクンとなった。やがて、その場に立ちすくみ、肩を揺らしている。
「アホやなあ。泣く奴があるかい。おれの口癖みたいなもんや。」と雅美の肩へ手を置くと、「早く行ってこい。」と便所へ向けて背中を押した。
もう次の日の朝だった。和己は仕事着に着替えると、母屋へ向かった。母屋の台所では、女三人がかりで、昼の弁当の用意をしている。「もう勝手に食べてや。忙しいねんから。お前らの世話、いちいちやってられるかいな。」と智子が吠えるようにしていった。
和己は炊飯ジャーを開けて、茶碗に自分の分と雅美の分のご飯をよそった。そのとき、伯父が台所に入ってきた。「お早うございます。」和己は丁寧に挨拶した。「おう、お早うさん。」伯父は機嫌良くみえた。「腹、一杯食べるんやぞ。」と伯父は和己に声をかけるやがて、女たちもテーブルにつき、雅美もやってきて、朝食がはじまった。
雅美は兄が一緒にいてくれるだけで嬉しかった。和己がいなくなれば、離れの寂しい部屋で一人ぼっちである。今まで兄弟で支えあって暮らしてきた雅美には、兄のいない生活は考えられなかった。
「お前が余計なことを喋ったからや。」と和己は横で寝ている雅美をせめた。雅美はせめられても平気だった。<謝ったらしまいや。>と軽く考えていた。「そやけど、あのときは驚いたぞ。」と和己は寝ようとする弟を揺り起こした。
雅美は布団の上に座ると、「もう、しつこいねんから。」と和己をせめた。そして立ち上がると、便所へ向かった。「お前が悪いんじゃ、ボケめが。」と和己は弟の背中に向かって声をかけた。その言葉を背中に受けたとき、雅美の体が硬直した。そして背中がビクンとなった。やがて、その場に立ちすくみ、肩を揺らしている。
「アホやなあ。泣く奴があるかい。おれの口癖みたいなもんや。」と雅美の肩へ手を置くと、「早く行ってこい。」と便所へ向けて背中を押した。
もう次の日の朝だった。和己は仕事着に着替えると、母屋へ向かった。母屋の台所では、女三人がかりで、昼の弁当の用意をしている。「もう勝手に食べてや。忙しいねんから。お前らの世話、いちいちやってられるかいな。」と智子が吠えるようにしていった。
和己は炊飯ジャーを開けて、茶碗に自分の分と雅美の分のご飯をよそった。そのとき、伯父が台所に入ってきた。「お早うございます。」和己は丁寧に挨拶した。「おう、お早うさん。」伯父は機嫌良くみえた。「腹、一杯食べるんやぞ。」と伯父は和己に声をかけるやがて、女たちもテーブルにつき、雅美もやってきて、朝食がはじまった。