雪に消えたクリスマス

「…思い出したよ…全てな…」
　俺は、まだ心配そうに俺の顔を覗き込んでいる玲にそう言うと、小さく笑みを返す。
　玲はそれを見て、「ホゥ」と胸を撫で下ろした。
「玲…全て思い出した所で、お前に一つ質問がある…」
　俺の言葉に、玲は「なんですか？」と、ニッコリ微笑みながら聞き返す。
「お前はウララの事が好きなのか？」
　それは、単刀直入な俺らしい質問の仕方だった。
　俺は既に死んでいる…それは、もはや曲げようもない事実。
　俺はそれでもいい…自分で、それが納得できたから。
　しかし、ではウララはどうなる？ウララはまた、独りぼっちになってしまうのだろうか？
　俺には、それが気がかりでならなかった。
「好きですよ…勿論、誰よりも…」
　玲は、俺に悪びれる様子もなく、静かに、だが力ある言葉でそう言った。
「…ずいぶんとハッキリ言うな…仮にも、俺はウララの彼氏だぞ？ウララが、お前よりも俺も方が好きで、ずっと忘れられないとは思わないのか？」
　俺の皮肉にも、玲はまったく動じない。
　只、静かに笑みを浮かべてこう言った。
「…そうですね。確かに、すぐには創真君の事を忘れるのは無理かもしれません…。でも安心してください。創真君はすで亡くなってこの世にはいません。そして、僕にはこれから無限と思える程の時間があります。その果てしない時間の中で、彼女は創真君の事を忘れていきますよ」
　玲はそう言うと、また小さく笑った。
　それは、皮肉ではなく、どこか優しさにも似た笑顔だった。
「…そうか………そうだな…」
　俺も、少し頼りなく笑った。