雪に消えたクリスマス
最終話 そして…
12月23日。
 雪が、辺り一面を覆っている。
 雪は針葉樹の枝にも積もり、まるで粉砂糖をまぶしたようだ。
 俺は、もう二日間、この林の中を彷徨っている。
 二年前の薄れかけた記憶、降りしきる雪…俺は、悪戦苦闘しながら、探し続けた…。
 積もった雪に手を入れると、ガラスで手を切ったような苦痛が俺を襲う。
 まったく…死んでいるのに、こういった感覚だけは残っている。
 雪を退け、凍った土を掘ると、爪が割れて、そこから血が噴き出す。
 俺は、苦痛で声を上げそうになるが、それでも雪の中を探し続けた。
 二年前のあの日に、ウララに渡せなかった、アレを…。
 突然、激しい頭痛が俺を襲う。
 その、あまりの痛さに、思わず目がかすむ。
 この二日間で、俺の頭痛はピークに達していた。
「もう、止めにしましょうよ…」
 不意に、タクシー・ドライバーが俺に話しかける。
 俺は返事を返さず、只、黙々と探し続けていた。
「創真さんは霊体なんですよ!分かっているんですか?こんな所で力を使っていたら、その分こっちにいる時間が縮まってしまう事ぐらい、創真さんだってご存じでしょう?もっと彼女さんの側にいてあげるのではなかったんですか?可哀想に…創真さんの体だって透けてるじゃありませんか!」
 タクシー・ドライバーが言う通り、土を掘る俺の手は、僅かに透けて見える。
 それは、俺の体が消滅しかけている事を意味していた。
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