雪に消えたクリスマス
「…どのみち、ずっとこっちにいるわけにはいかないんだ…」 
 俺はそう言って、ひび割れた爪で土を掘り起こす。
 タクシー・ドライバーは、まだ何か言いたそうな顔をしていたが、一心に雪をかき分けている俺を見て、口をつぐんだ。
 雪は、後から後から降り積もり、探り終えた場所もそうでない所も一緒にしてしまう。
 俺は、自分が跳ねられた場所と、放り投げられた場所を計算しながら、辺りを探る。
 しかし、目的のモノは中々見つからなかった…。
 時間が経つに連れ、俺の体はいう事を聞かなくなってくる。
 それは、寒さや苦痛も関係していたが、それだけではないようだ…。
 もしかしたら、俺はこのままここで消滅してしまうのかもしれない…。
 そんな事まで考え始める。
 俺はこのまま…。
 その時だ。
 ゴツッっと、俺の指先に何か硬いモノが当たった。
「………やった!」
 俺は思わず声を上げた。
 それは、二年という時の中で、風雨に曝され、土に埋もれていたのだ。
 俺は、回りの土を丁寧に退けると、土の中から、それを引き抜いた…。
 俺は、感動の面持ちでそれを見つめた後、今度はタクシー・ドライバーに、それ掲げて見せた。
「それが、創真さんの捜してた物………?」
 タクシー・ドライバーは、少し不思議そうな顔をしたが、俺は満足だった。
 そして、全身の力が抜けるのを感じた。
「創真さん!?」
 俺は、その場に倒れ込む。
 胸には、今見つけた自分の捜し物をしっかりと抱いて…。
「頼みがある…この手紙を…ウララに届けてくれないか…?俺は…少し疲れたから…ちょっと…休んでる……から………」
 俺は、懐から、前もって書いておいた手紙を、タクシー・ドライバーに渡す。
 そして、少しだけ、目を瞑った…。

 
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