雪に消えたクリスマス
「…これが、創真が私に渡したかった………モノ…?」
 グラスを手渡されたウララは、少し困った顔して、その琥珀色の液体と、俺の顔を交互に見つめた。
「私が、アルコール全然ダメなの、創真だって知っているでしょ?それでも、コレなの?」
 ウララの問いに、俺は自信満々に首を縦に振ると、飲んでみろと、手で合図をする。
 すると、ウララはまず、その得体の知れない液体の匂いを嗅いだ。
「………いい香り…」
 そして次に、恐る恐るグラスに口をつけると、琥珀色の液体を少しだけ、口に含んだ。
 そして………。
「………美味しい…。何コレ?本当にお酒?」
 ウララのこの反応に、俺は満足げな笑顔をみせた。
「アイスワインっていうんだよ。これなら、ウララも飲めるだろ?ずっと言ってたもんな…お酒は、飲みたいけど飲めないから、一度酔えるほどお酒を飲んでみたいって…」
 俺がそう言うと、ウララはグラスに入っていたアイスワインを、一気に飲み干した。
「おいおい?一気にそんなに飲んだら…」
「もう一杯!」
ウララは、グラスを俺に差し出して、更にアイスワインをねだる。
 俺は、ウララのグラスにアイスワインを満たすと、ウララはそれもすぐに飲み干してしまった。
「麗…」
 俺がそう呼ぶと、ウララは驚いた顔をして、俺の方を振り向く。
「…ずっと、俺はウララの事、麗って、呼びたかったんだ…でも、あの頃の俺は、麗の事、ちゃんと『麗』って呼ぶのが恥ずかしくて…で、二人の記念日の日、このワインと一緒に麗の事、ちゃんと『麗』って呼ぼうと思ってたんだ…」
 そう言って抱き締めようとした俺の腕が、ウララの体を素通りする。
「…創真?」
 もう、体の感覚がなかった。
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