雪に消えたクリスマス
「…創真…逝っちゃった………」
 私が、ポツリと呟くと、玲は「はい」と相づちを返してきてくれる。
「私が…まだ創真の事好きだって言ったら、玲は怒る?」
 私の問いに、玲からの返事はなかった。
 代わりに、玲は首を横に振ると、笑顔で私の頭を撫でてくれた。
「怒りませんよ。だって、麗は僕の事が好きになるに決まっているんですから、創真君の事だって、除々に忘れていきます。それまで、少し待てばすむ事です」
 玲はそう言って、悴む手に、ハァーッと息を吹きかける。
 息が白くなって、すぐに空へと吸い込まれて行く。
「…忘れる事なんて…本当にできるのかな?もしできたとしても、これからずっと先の事だと思うの…。それでも玲はいいの?」
 玲は、黙って空を見上げていた。
「麗…ホラ、雪が街灯の灯りに照らされて、まるで星のようです…綺麗ですね…」
 玲が言った通り、街灯に照らされた雪が、光を反射して星のように見える。 
 シンシンと降る雪が光と見せる、不思議な景色…。
 私と玲は、しばらく街灯に降る雪を、黙って眺めていた。
「忘れろ…なんて、ヤボな事は言いませんよ…。只、それ以上に素晴らしいモノが、この世にはまだ沢山あるんです。それを、二人で見つけられたらいいな…なんて、思うだけです…」
 玲は、ちょっと寂しいような、優しいような、そんなどちらともつかないような笑顔で笑った。
 私は、玲の腕に抱かれて、ずっと空を見上げていた。
 この雪を降らしている雲の上には、創真がいる。
 今頃、創真は何をしているのだろう?
 案外、天国に逝って、可愛い天使の女の子にでも声をかけているのかもしれない…。
 そう考えれば、少しは沈んだ気持ちが軽くなるような気がした。
 ちょっとだけ、天使の女の子に声をかけている創真を想像してみる…。
 あまりにもリアル過ぎて、なんだか腹が立つ。
 
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