雪に消えたクリスマス
中には、オルゴールが設置してあって、キリキリッとネジを回すと、音楽が奏でられる。 写真には、二人の人間が写っていた。
 一人はこの俺と、そしてもう一人は…。
 …………ウララ。
 彼女の本当の名前は、水浪 麗というのだが、みんな愛称で、ウララと呼んでいた。 もともと、レイと呼び捨てにするには、幼い顔立ちをしていたので、『ウララ』という愛称の方がしっくりとしていた。
 俺も、出会った当初は、『水浪さん』なんて呼び方をしていたが、いつのまにか、『ウララ』という呼び方に変わっていた。
「…もう二年だもんなぁ…ウララのヤツ、怒ってるだろうなぁ…」
 写真立てを見つめながら、遠い日の記憶に、思いを馳せる。
 俺は、旅に出る事を、隣人にも、ウララにも言わずに姿を消した…。
 二年前、二人はまだ大学生で、ウララとは無理矢理連れていかれたコンパで知り合ったのだ。
< 13 / 121 >

この作品をシェア

pagetop