雪に消えたクリスマス
確かに、これでは、他の着飾ったバカな女と比較した場合、少し陰気な感じがする。
 しかし逆に言えば、そんな事をしなくても十分に見える顔立ちと言うことだ。
 何もしないでも、外をあるけるウララが、オシャレをし、化粧をしてこの場に出てきたらどうだろう?
 とたんに、ウララの争奪戦が始まるだろう。
 その事に、おそらくウララ自身が気づいていないのだろう…ウララは、只、今この場をやり過ごせればよいのだ。
 きっと、今俺に話しかけられている事さえ、ウララの中では驚きなのかもしれない…。
「俺、こういう所は、今日が初めてなんだけど、ウララはこういう所、よく来たりするの?」
 すでに呼び捨てにされたのが、気に触ったのか、ウララの左眉が、ピクッと動くのを、俺は見逃さなかった。
「…友達に連れられて…無理矢理…」
 やはり、思った通りだった。
 すぐに会話が切れがちになってしまうウララだったが、実際、彼女に愛称があってよかったと、俺は思った。
 話をし慣れていると思われがちな俺だが、実は、相手の名前を呼ぶには、中々緊張してしまって、上手く話せなくなってしまう。
 どう呼びかけて良いモノなのか、分からなくなってしまうのだ。
 だが、愛称ならば、気楽に呼ぶ事ができる。
 変なモノだが、俺は、そういう人間だった。
…ん?よく考えてみると、俺は最初からウララの事を、瑞浪さんなんて呼んでいないな…まったく、記憶なんてものはあてにならない。
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