雪に消えたクリスマス
「俺も、今日初めてコンパってヤツに参加したんだ…それも無理矢理!お互い、災難だったね♪」
 俺がそう言うと、ウララは小さく笑った。
 その笑顔が、俺は好きだった。
「なんで笑うかな~?」
 俺が、おどけた調子でそう言うと、ウララは更に笑った。
 笑ったウララの顔は、やっぱり、美人だった。
 俗に、笑った顔が美しい…と言われる事があるが、俺はそうは思わない。
 本当に美しい顔は、少し薄幸そうで、頼りなくて、今にも壊れてしまいそうな、そんな顔…。
 笑った顔は、『美しい』ではなくて、『可愛い』と言うのだ。
 ウララは、手で口元を隠しながら、クスクスと笑っていた。
 ここにいる男共では、ウララのこの笑顔を引き出すことはできなかっただろう。
 俺だけが、彼女の美しさに気づいていた…。
「だって、秋月さんが、コンパに来るのが初めてだなんて、ものすご~く嘘っぽいんだもん」
 ウララは、ひとしきり笑い終わると、初対面の俺に失礼なセリフを浴びせかける。
 少し、オットリとしたような、ゆっくりとした口調。
「本当だって!人の話を信じない人は、エンマ様に舌を引っこ抜かれるぞ~」
 そのセリフが、収まりかけていたウララの笑いを引き戻す。
「…それを言うなら、『嘘をつくとエンマ様に舌を引っこ抜かれる』でしょう?」
 ウララはそうとうおかしかったのか、目に涙まで浮かべて、お腹までかかえて必死に笑いを堪えようとしていたが、俺と目が合うと、とたんに笑い出す。
 俺は、わざと大きめのため息をつき、笑っているウララに冗談っぽく非難の視線を向ける。
 
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