雪に消えたクリスマス
「そう言うんじゃなくて、俺は本当にコンパ初めてだったし、それに…」
 俺は、そこで言葉を切った。
 そうしたのは、ここで言葉を切れば、ウララがこちらの方を向いてくれるだろうという計算があったからだ。
「…それに?」
 ウララは、俺の思惑通りに、俺の方へ顔を向ける。
「それに、俺がウララに声をかけたのは、ウララも、あの場所に嫌々来たんだろうなぁ。ってのがわかったから…そう思った瞬間、君をほっとけなかった…」
 俺はゆっくりと、ウララに顔を近づかせていった。
 ウララも、少しずつ顔を近づけている。
 そして、二人の顔が間近に近づいた時、ウララはハッとした様子で、急に俺の前から顔を離した。
「あ、もう、家の前ですし…今日は送ってくれてありがとうございました!」
 まるで逃げるように、ウララは、車から下りる。
 そして、玄関へと駆けていった…。
「今度、映画でも観に行かない?」
 俺の言葉が聞こえたのか、聞こえていなかったのか?それはさだかではなかったが、彼女は、玄関先で俺に一礼すると、家の扉の奥へと消えていった…。

 俺は、木製のフォトフレームの縁を撫でながら、昔の事を思い出した。
 確か…あれから俺は、ウララの携帯に電話をかけて、映画へ行ったり、遊園地へ行ったり、ケンカしたり…。
 ウララとの様々な思い出がよみがえってきた。
「ウララに…帰ってきたって、連絡しないとな…」
 俺は、フォトフレームをダッシュボードの上に立て掛け直した…。
 
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