雪に消えたクリスマス
 俺の両親が、血を分けた本当の両親であっても、そうでなくても、俺の両親である事に違いはなかったし、両親は俺の事を愛していた…少なくても、俺はそう思っている。
 『育ての親より生みの親』、『血は水より濃し』なんてことわざがあるが、まったくバカバカしい…俺にとっての両親は、俺を育ててくれた両親に他ならない、それ以上もそれ以下もない…。
 もっとも、俺の生みの親とやらは、もう他界していていないと聞かされているが…。
 そう言えば、俺には兄弟がいると聞かされた事がある。
 生きているかどうかも分からないし、別に会ってみたいとも思わないが、この戸籍謄本を見て、ふとそんな事を思い出した…。
 俺は、静かに、その戸籍謄本を折り畳み、引き出しの中に閉まった。
 たまに掃除なんてものをすると、思い出したくもないことを思い出すモノだ。
 俺は気持ちを切り替え、ウララに電話してみる事にした。
 居間に行き、受話器をとる。
 ウララの携帯電話の番号は、今も俺の脳細胞の中にある。
 俺は、一つずつ順番に規則正しく並んだナンバーを押してゆく…。
 トゥルルル…トゥルルルル…カチャッ!
 数回のコールのすえに、電話を取る音がした。
「もしも…」
「お客様のおかけになった番号は、現在使われておりません。番号をお確かめになって、もう一度おかけなおしください…」
 電話に出たのは、面白くもない棒読みを続けるテープアナウンスの声だった。
 ま、あれから二年も経っていれば、携帯くらい変えるだろう。
 
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