雪に消えたクリスマス
「…そうよねェ。そんな事でもなけりゃ、秋月君が大学になんて顔を出す筈もないもんねぇ…」
 そう言いながら、葉子は立ち上がると、俺に何も言わずに奥の方へ姿を消した。
 二、三分経ってから、葉子が俺の前に再び姿を現した時には、右手に何か書類のような物をもっていた。
「…これ、大学に残ってるウララの就職先のデータ…。本当はダメなんだけど、私が職権乱用してあげるから、感謝しなさいよ!」
 葉子はそう言うと、俺の目の前に、今持ってきた書類を静かに置いた。
「ありがとう…」
「ただし!」
 俺が、葉子に礼を言って、書類を受け取るより早く、葉子の手が、書類の上に置かれた。
 葉子の顔は、少し険しい。
「秋月君、友達としていうけど、ウララの事不幸にしたら、私が許さないからね!」
 意味深な言葉を俺に浴びせかけた葉子だったが、それ以上は口を開かなかった。
 俺は、再び葉子に礼を言うと、事務室から出ていった。
「秋月君!」
 正に、俺が事務室から出る直前、俺は葉子の呼ぶ声に足を止めた。
 葉子が、おいでおいでをするので、何事かと近づいてみる。
「ごめん、ごめん。これ、ウララに渡しておいて…」
 そう言って葉子が俺に手渡したのは、可愛い封筒に入った手紙だった。
「中々ウララに会う機会がなくってさ…それから、関係ないんだけど、秋月君ってさ、兄弟いたんだね?私も驚いちゃった…じゃ、ウララによろしく言っといてね♪」
 
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