雪に消えたクリスマス
そんな筈、あるわけもないな…と、俺は一人で苦笑いをした。
 二年もいなかったんだ…どこかで情報が漏れていてもおかしくない月日…きっと、葉子はどこかの噂で、俺の兄弟の事を知ったのだろう。
 噂の出所は、まさかウララ…?
 そう言えば、ウララにだけは、俺に兄弟がいる事を話していた。
 ウララ…か………。
 俺は、手にした缶ジュースを、グッと飲み干した…。

「…あ、萩さん…さっき、誰と話していたんですか?」
 そう言って葉子に話しかけてきたのは、同期でこの職場に入ってきた若い男性事務員からだった。
 講義の時間となり、事務室内は先ほどの賑わいが嘘のように静まり返っている。
「ん?あぁ、二年前に蒸発しちゃった人がいてね…」
 葉子は、同僚の男性事務員に曖昧な返事をして、手元にあった資料に目を通す。
「…もう、二年も経っているのに…今更…」 葉子は、深いため息をして、手元の資料を手早く片づけた…。
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