雪に消えたクリスマス
12月12日。  
昨日は、とうとうウララに会う勇気が出せなかった。
 しかし、今日こそは、ウララに会いに行こうと思う…。
 俺は、葉子に手渡された手紙を見つめる…不意に、中を覗いてしまおうかという衝動にかられるが、それは止めといた。
 葉子がこの手紙を俺に託したのは、少しでもウララに会いやすいようにという、葉子なりの気の使い方だったのだろう。
 どうせ、大した中身ではないだろうが、確かに、俺にとってみればよい口実だ。
「よしっ!」
 俺は、思い腰を上げ、ウララに会う決心を固めた。
 空には相変わらず、重たい雲が横たわっている。
 また、降ってくるかもしれない…。
 俺のその予想は的中した。
 霙混じりの重たい雪は、止む事を知らぬかのように俺に降りしきる。
 一瞬、あまりの寒さに挫けそうになった俺だったが、意を決して、バイクに跨った。
 凍ったアスファルトの上を、右に折れ、左に折れ、交差点を幾つか越える。
 すると、ウララが働いているであろう銀行が見えてきた。
 バイクを、近くの路肩に停め、まずは外から、銀行の中を伺う。
 中に客は、五人程度…ATMが主流になった昨今では、窓口に客がいることは少ない。
 次に店員は、と…。
 外から窓越しに中の様子を伺う俺の前を、数人の通行人が横切る。
 俺は、ハタと、自分のしている行動の怪しさに気づいた。
 外から、銀行内の客の数と、店員数を確認する…まるで強盗のようではないか。
 俺は、警備員が寄ってこない内に、銀行の中へと入って行く事にした…。
 
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