雪に消えたクリスマス
・第五話 春日部 玲…
12月14日。
今日は、ウララが用があるというので、会うのを諦めた。
 俺は持て余した時間を潰すため、愛車に跨る。
 相変わらず並ぶ四つの0も、今では気にならなくなった。
 午前は晴れていた空も、俺が出かける頃には妖しい雲が顔を覗かせる。
 東高西低の冬の気圧配置で、こうも天気が変わりやすいのは珍しい。
 今年はよく降る霙混じりの重たい雪も、寒さのためか除々に形がしっかりしてくる。
 俺は、行く宛もなくバイクを走らせた。
 重たく垂れ込める鉛色の空、凍ったアスファルト…。
 交差点を抜けて、右に折れ、左に折れ…信号機を幾つ越えただろう…?
くねった道を走りながら、俺はそんな事を考えていた…。
 いつの間にか吹雪いてきた風雪が、俺の肌を切りつける。
 息が白い………。
 あの日のように、白い吐息が、俺の視界を覆う。
 しかし、それも外気の冷たい空気にすぐに掻き消されていった。
 ………あの日のように…?
 あの日って、いつだ………?
 俺は、頭に軽い鈍痛を覚えた。
 右手はしっかりとアクセルを握り、左手で頭を押さえる。
 すると、少し頭を走る鈍痛が和らいだ。
 俺は、危険を感じて、いったんバイクを下りる事にした。
 そこは、はじめて来た場所で、丘のような所だった…。
 丘の中央には、巨木が一本だけ、ポツンと佇んでいる。
 …桜の樹だろうか?
 俺は、その大樹の横にバイクを停め、自分自身は巨木の下へと入り込む。
 
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