雪に消えたクリスマス
 幸いな事に、吹雪はだいぶ弱まってきていた。
 見上げると、巨木の枝は、四方八方に伸びており、風雪を凌ぐには都合がいい。
 俺は、まだ愛車のエンジンに残っている熱で暖をとり、まだズキズキしている頭痛の回復を待つ。
 …こんな場所が、近くにあるとは知らなかった。
 もっとも、ちゃんと認識して走ってきたわけではないので、ここが本当に近いのかは、疑問だが…。
 大樹のある丘の上から、街の全貌が見て取れるので、そんなに遠いというわけではないだろうが、思わぬ所で、良い発見をした。
 俺は心の中で、今度はウララと一緒にここに来ようと、強く誓った。
 気がつくと、吹雪はほとんど止んでいた。
 残るのは、チラチラと舞い降りてくる粉のような雪だけである。
 頭痛も、ほぼ収まった。
 俺は巨木の下から出ると、伸びをして辺りを見渡す。
 丘の回りには、針葉樹を中心とした林が広がっている。
 俺はおもむろに、近くの林の中に分け入って行った。
 針葉樹の林の中は、深い枯れ葉の絨毯や折れた木の枝などが鬱蒼と覆い被さっている。
 俺はその林の中を、訳もなく歩き回る…。 ………俺は、何故こんな事をしているのだろう?
 数分後、さすがに我に返った俺は、林の中の探索を止めた。
 いくらウララに会えなくて暇だといっても、林の中を散策するのは意味がない。
 俺は、時々自分でも訳の分からない行動をする時があるが、もう、ボケてきたのだろうか?
 
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