雪に消えたクリスマス
 あ~、いやだいやだ、年は取りたくないもんだ…。
 と、冗談めいた事を考えながら、俺は愛車を置いた丘まで戻った。
 ここにいてもする事はないので、今日はこれで家に帰ることにした。
 まったく、ウララと会わない日は、本当に暇である。
 俺は一人で悪態をつきながら、バイクを走らせ、丘を後にする。
 帰り際、また雪がちらついてきた。
 今年の冬は、寒い冬になりそうだ…。
 12月15日。
 クリスマスまで、後十日…。
 別にだからどうしたと言われればそれまでだが、何となく、心がウキウキしてしまうのは、俺だけではない筈だ。
 今日は、ウララに会う。
 俺がウキウキしているのは、そのせいかもしれない。
 いつものように、ウララの退社時間まで待ち、一緒に食事をする。
 そして、二人は自分の家へと帰って行く…。 次の日。
 ここ二、三日、俺は夢を見る。
 その夢はいつも同じ場所から始まる。
 まず、高く青く澄んだ空が、俺の事を見下ろしている。
 俺はそこで、まん丸の子供のように、緑香る大地を楽しそうに走っている。
 毎夜見る、同じ夢…。
 見たこともない場所なのに、不意に懐かしさを覚えるような、そんな不思議な夢だ。
 俺は、この間見つけた丘へと、バイクを走らせる。
 冷たい風が、俺の肌を切りつけても、俺は途中で引き返そうとは思わなかった。
 
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